古美術研究 XLI ―Antique art study
この厨子だけではなく飛鳥時代奈良時代の寺院をみるたび
かの葛飾北斎の富嶽三十六景「遠江山中」に登場する前挽大鋸も台鉋もない時代に
丸太を切り出し製材しよくこんな精巧なものを作れたものだと感心します
物作りの方なら経験的に測定工具なしに幾何形体を作る難しさをご存じだと思うのですが
職人はまず定盤や測定工具を準備しなくてはならない
定盤を水平に固定しなくてはならない
そして平面 直線 直角の整った幾何形体の各部材を準備しなくてはならない
鑿はあったようですが工具屋さんがあるわけでなし手作りで用意し
刃物はもちろん研がねばならない
山へ行って砥石を準備しまず砥石の平面出しをしてから研ぎがはじまる
この玉虫厨子ひとつで
飛鳥時代に木工制作の技術が体系的に出来あがっていたことを雄弁に語ってくれます
しかし屋根瓦と床がある建物などごくごく限られた貴人の住まいか寺院だけで
職人の住まいはおそらくまだ竪穴式住居で仕事以外でこんな建物には入ったことがないでしょう
もちろんこの厨子の美しさはそんな事とは無関係なのですが
見ているとそんな物語が湧きあがってくるのです
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- 2015/10/24(土) 00:00:00|
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